ポリオについて no.

かるがもクリニック 院長 宮原篤

 

ポリオについてno.1

http://iryo000.web.fc2.com/2011aug_aboutpolio01_drmiyahara.htmで読めます。

 

 

5.いつ頃不活化ポリオワクチンができるのか?

随分前から日本でも不活化ポリオワクチンを導入すべきだという声が出ていました。

しかし、国は輸入ではなく国産にこだわりました。詳細は省きますが、日本ポリオ研究所での開発が失敗し、開発が滞っていました。


世論に押される形で、不活化ポリオワクチン(IPV)は現行の三種混合ワクチン(DPT)との組み合わせで世に出る予定です(IPV-DPT)

公費接種で打てるようになるのは来年度ではないかという声もあるのですが、いろいろな声を総合するとどうやら再来年度になりそうです。
「もやしもん」で不活化ポリオワクチンについて取り上げられたとき、選択肢として「3.もう少し様子を見る」

(つまり、不活化ポリオワクチンも生ポリオワクチンもしない)というのがありましたが、これは冒険行為です。

これからも行政で生ポリオワクチン接種が行われる以上、接種された子どもの便から二次感染が起きる可能性があるのです。
http://setagaya-syouni.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-1a82.html

 

調布市で、来年度から不活化ポリオワクチンが始まるというアナウンスがありました。

http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1313569415389/index.html

 

直接調布市に問い合わせてみたのですが、春・秋のいつ切り替わるか不明だそうです。

このような状況で「平成23年度の秋の接種対象者(平成22年7月1日生〜平成23年6月30日生)へのお知らせを、

予定されていた時期より早く送付させていただきます」というのは一体どうしてなのか、疑問です。

 

追伸:
9月5日に調布市のサイトを再確認したのですが、表記が変わっていました。
【表題:ポリオ予防接種のワクチンが生ワクチンから不活化ワクチンへと移行予定です(平成24年度中)
本文:現在,生ワクチンを使用して実施しているポリオ予防接種ですが、
平成24年度中に不活化ワクチンを使用した接種へと移行する予定となっています。】
 
 
【表題:ポリオ予防接種のワクチンが生ワクチンから不活化ワクチンへと移行予定です
本文: 現在,生ワクチンを使用して実施しているポリオ予防接種ですが、
平成24年度中にも不活化ワクチンが認可されるという報道があり、
認可されればすみやかに不活化ワクチンへ移行することを検討しています。】
 
へと変更になっていました。

 


6.日本で開発される不活化ポリオワクチンってどういうの?


日本で開発される不活化ポリオワクチン(IPV)は大きく分けて2つあります。

一つは前述のIPV-DPTです。

 

それから単独のIPV

IPV-DPTが市場に出る課程で「つなぎ」としてのIPV単独ワクチンが必要なため、急遽開発が要請されました。

事実上輸入ワクチンのサノフィパスツール製のIPV(多くの施設で今使われています)が使われる予定です。

問題は国産のIPV-DPTです。IPVは国際的には毒性の強いウイルス株(ソーク株)を不活化させて(殺して)作ったものです。

しかし日本で開発しているのは、このワクチンと、今生ポリオワクチンで使われている、毒性の弱いウイルス株(セービン株)から作られたワクチンの2つです。
世界で例を見ないセービン株で作られた不活化ポリオワクチンは、どのくらい効力があるのか、現行の不活化ポリオワクチンとどの程度互換性があるのか、分かりません。

 


7.そもそも日本で輸入物のポリオワクチンをしていいの?

 

10年以上も前の平成12年に当時の丹羽雄哉厚生大臣が、

「最初の段階ではいわゆる個人輸入という形になると思いますけれども、そういう形で接種することは可能だ」と明言しています。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/bdaa03564a4307a3220e3281e5133237


今年になって、国立感染症研究所の岡部先生が不活化ポリオワクチン個人輸入について

「あたかも外国製の新車を購入し、ナンバーをとらないまま乗り始めているような状況ともいえる。」

と発言しています。立場上仕方ないのかもしれませんが、不活化ポリオワクチンの普及および

生ポリオワクチンの接種率低下をみて内心焦っているのかな、と思います。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110630/bdy11063003030000-n1.htm


8.個人輸入のワクチンで不具合があった場合補償はありますか?
 非常に大切、かつ微妙な問題です。多くの輸入代行業者では、会社独自の補償制度があります。

しかし、そのためには患者側が医療側に裁判を起こし勝訴する(つまり医療側が負ける)必要があります。

今の日本の裁判制度を考えると、非常に困難な制度であると言わざるを得ません。

しかしながら、不活化ポリオワクチンは歴史の長い安全性が確かめられているワクチンです。

私の知る限り、この制度で保障が出た事例はありません。


9.日本のワクチンと同時接種してもいいの?


日本で行われている現行のワクチンと輸入不活化ポリオワクチンは、医学上同時接種しても問題ありません。

しかし、同時接種をすると上記の業者による補償がなくなります。日本のワクチンには補償制度があり

同時接種でも補償は行われますが、輸入ワクチンとの同時接種での補償は前例がない為、どうなるかわかりません。

国による補償のないワクチンのため、同時接種の最終的な判断は残念ながら接種医や保護者に委ねるしかありません。

当院では、普通に同時接種に応じています。


10
.不活化ポリオワクチンはしばらく自費で行うしかないの?


日本のワクチンには定期接種(MRBCGなど)、任意接種(おたふく・水疱瘡など)、

行政措置予防接種(自治体負担のあるインフルエンザ・ヒブなど、一部の自治体ではおたふくや水疱瘡も)などあります。

公費負担があるのは定期接種と行政措置予防接種ですが、個人輸入である不活化ポリオワクチンは組み入れることはできません。


そんな中、世田谷区で動きがありました。不活化ポリオワクチンを世田谷区独自で助成することはできないか?
Vol.219
ポリオワクチン問題 〜個人輸入のIPVに世田谷区は公費助成できないのだろうか?〜 http://medg.jp/mt/2011/07/vol219-ipv.html
Vol.226
ポリオワクチン問題 〜個人輸入のIPVに世田谷区って公費助成できないのだろうか? その2http://medg.jp/mt/2011/08/vol226-ipv2.html
Vol.243
ポリオワクチン問題〜個人輸入のIPVに世田谷区って公費助成できないのだろうか? その3http://medg.jp/mt/2011/08/vol243-ipv3.html


お一人から始まった活動ですが、区長や区議を巻き込んでいます。この文章がアップされる頃には、決着が付いているでしょうか?

ただ世田谷区ではヒブワクチン・小児肺炎球菌ワクチンの公費負担は一部であり、またおたふく・水痘ワクチンの公費助成もありません。

本来はこちらも国レベルで解決すべき課題ではありますが、予算を子ども達の為に費やしてもらいたいです。

 

11
.どうして日本のポリオワクチン行政はこんなにヘンテコなの?

これは私にもよくわかりません。被害者救済の視点からワクチン裁判で国の敗訴が続き国はワクチンに対して後ろ向きになりました。
一部マスコミもワクチン悪者論的な記事が多かったです。またワクチンに関する産官学民の利害関係は複雑で矛盾に満ちています。
ポリオワクチンのみならず、ワクチン全体について日本は20年ほど遅れていると言われています。

しかし、言えることは矛盾に見ていながらもワクチンは必要があり、これからも続ける必要があるということです。
ポリオウイルスが世界の何処かに存在する限り、生であれ不活化であれポリオワクチンを中止したら日本でも流行する可能性は大きいです。
私たちは粛々と不活化ポリオワクチンを進める必要があります。また全国的にOPVのみならずDPTの接種率も低下しています。
今後IPV-DPTを見据えての接種差し控えだと思いますが、赤ちゃんの百日咳は命に関わります。DPTは皆さん接種していただきたいです。
 

今年も10月から世田谷区で生ポリオワクチン接種があります。

医師会会員である以上、私は要請があれば生ポリオワクチン接種を行わなければなりません。

その時までに、多くの人が不活化ポリオワクチンを接種していて、接種会場がガラガラになっていることを切に希望します。

 

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