「子どもの生活リズムを見直そう!早寝 早起き 朝ごはん」

朝霞台中央総合病院 小林真澄小児科部長

 

「早寝、早起き、朝ごはん」というのは日本小児科学会が提唱するスローガンの一つです。

なぜこのようなスローガンを出したのか、それは今子どもたちの生活リズムが乱れて

色々な問題が出てきているからです。

 

少々古くて10年くらい前のデータではありますが、東京都の小学校4年生から中学校3年生までの子どもたちの、なんと6割が体調不良を訴え、そのうちの6割が睡眠不足でした。また日本小児保健協会の調査で、夜10時以降に就寝する3歳児が50%という

データもあります。

 

今のお父さん、お母さんたちが子どもの頃と比べてみていかがですか?ちょっとおかしいと思いませんか?小児科外来では、大体5月の連休明けくらいから、頭痛、だるい、微熱、腹痛、気持ちが悪い、食欲がない、何となく元気がない・・・などという訴えの子ども達がふえてきます。

 

そのような子どもたちのほとんどは、検査をしてもどこにも異常がなく、よく話をきくと

寝るのが遅くて、十分な睡眠をとっていません。また食事も不規則のこともあります。

年齢が高くなると、携帯、ゲーム、パソコンなどを長い時間していることも多いようです。

 

最近は脳科学が進歩して、人間の脳のしくみが色々わかってきました。人間の生体時計は実は24時間より長いのです。それを地球の時間に合わせて調整する仕組みができています。

 

皆さんが経験する時差ボケというのは、この生体時計と地球時間のずれた状態です。そして生体時計の調整をリセットするのが、朝、光を浴びるということなのです。生まれたばかりの新生児はまだこのリズム調整ができませんが、生後3〜4か月になると、朝の光を手がかりにして、毎日自分の生体時計を、地球の周期24時間にセットするようです。また朝、光を浴びることで、夜眠くなるホルモンも調整されます。

 

睡眠は子どもたちの脳と体の整備工場のようなものです。睡眠が足りないと、体調を整えることが難しくなります。また子どもの情動面や知的な発達にも影響するという結果も出ています。

 

朝ある程度決まった時間に早く起きる、朝の光を浴びる、そして夜は早く寝て十分な睡眠をとるということが、子どもの健全な成長には欠かせないものなのです。そしてそれは乳幼児期にその基本ができていきます。

 

もう一つ、セロトニンという名前を聞いたことがありますか。セロトニンは脳の中の神経系の微妙なバランスを取るために重要な神経伝達物質です。うつ病や認知症などとの関連が研究されています。このセロトニンが低下すると情緒の安定が悪くなり、イライラして攻撃的になります。

 

セロトニンは、歩いたり、しっかり噛む、呼吸などのリズミカルな筋肉運動で増えることがわかっています。生活リズムが乱れて睡眠が十分とれないと、次のようなサイクルも起こるわけです。

 

  夜更かし→ 生体リズムの調子がうまく整えられない→ 昼間の運動量が減る→ 

セロトニンが少なくなる→ イライラする→ キレる

 

子どもが成長していく過程では、大人が子どものリズムを整えてあげなければ、自分ではできません。大人も時間に追われた生活をしているのが現状だとは思います。しかし子ども達が将来心身ともに健やかな生活ができるようにするためにも、保護者を含めて、大人みんなで、生活リズムを考えることが、今、必要ではないでしょうか。

 

小さな乳幼児がいる場合は、まずそのリズム作りから、そして幼稚園、学校に通っている子どもの場合は、夏休みなどで、時間が不規則にならないように、そしてきちんとした生活リズムを続けていくことを親子で話し合ってみたらいかがでしょうか?

 

早寝、早起き、朝ごはん、そしてしっかり遊ぶ(体を動かす)・・・当たり前ですが、本当にとても大事なことなのです。

inserted by FC2 system